ごみ問題と目の敵にされるファッション業界

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ガーナにある「ファストファッションの終着駅」…運ばれた古着の3分の1は埋立地行き
ファストファッションの生産増加がガーナの市場を圧迫しています。廃棄された古着は埋立地に山積みされ、それによって下水道が詰まり、海洋が汚染されています。

定期的に目にする、ファストファッションとゴミ問題についての記事。私自身ファストファッションとは関係が無いものの、同じ業界にいる身にしても他人事ではない問題です。消費者としての私のスタンスは1つ服をできるだけ永く着る。無駄なものは買わないというもの(つまり1着でも多く売りたいという仕事としてのスタンスとは完全に真逆)

だからこういった記事の結論としてよく見られる、大量生産の否定、受注生産への賞賛といったことを理解はできます。でも実際に多くのメーカーが少量生産や受注生産へと切り替えたらどういったことが起こるのか?を考えてみたいと思います。

たった2,000円ではTシャツは買えなくなる

もやし1袋30円、食パン一斤150円、卵1パック200円…。私たちは日々大量生産の恩恵を受けています。洋服も同様であって、UNIQLOのような品質の良いTシャツを2,000円未満で買えるのも、数百万枚という単位で大量生産されているから。もし大量に生産されていなければ、Tシャツは5,000円以上払わなければいけないでしょう。賃金が上がらないのに物価だけ上がって苦しいと叫ばれているなかで、ごみを減らすために大量生産体制を否定することができるでしょうか。このことはよく考える必要があると思います。

世界中の工場にいる工員さんが職を失う

100万着のTシャツを作るにはそれなりの規模の工場が必要であり、そこで服を縫っているたくさんの工員がいます。ファストファッションを生産する工場については、かつてバングラディシュで起こった縫製工場の崩落事故のような、ネガティブな印象を持つ方も少なからずいらっしゃるでしょう。でもファストファッションを生産することで、日々の収入を得ている人がいることも忘れてはいけません。仮にH&Mのような大企業がなくなった場合、下請け・孫請けといった関連企業含めて、どれだけたくさんの人が職を失うことになるでしょうか。自分が所属するちっぽけな1企業ですら、世界で1,000人以上の関係者がいるですから、ファストファッションに関わる人の数は万単位でしょう。環境問題の解決に注力する一方で、失業者をたくさん生み出しても良いのかという問題は議論されるべきと思います。

代わりの仕事を作り出せばという意見もありますが、やりがいを持って縫製業に携わっている人もいるのです。同賃金で別の仕事を与えるから、今あなたが行っている仕事は止めてくださいと言われて、はい。分かりましたと納得できるでしょうか?

受注して服を受け取るのは1年後?

当然ですが受注生産は時間がかかります。スーツをオーダーしたことがある方は、オーダーしてから数か月かかることを理解されると思いますが、それも生地や釦、芯地といった資材の在庫があることが前提です。そういった資材の在庫がなければ1年、あるいは1年以上経っても服は受け取れません。また生地や釦といった資材は工業品の要素が強いので、作るにはある程度まとまった量が必要です。受注生産のためにはこういった資材を在庫として備蓄していることが前提となります。つまり服の大量生産をなくそうとしても、その服の部品は少なからず大量生産しないと成り立たないのです。

まとめ

今回は冒頭の記事をきっかけに、よく目にするごみ問題の解決策について、実際に実施したらどうなるか?を考えてみました。ファッション業界が大量のゴミを生み出していることは事実としてあり、自分が所属する会社も、そして私も何ができるかということを日々模索しています。ただ無責任なジャーナリストが、少量生産とか受注生産とか、綺麗事をを言っているのを目にすると、そんなに簡単なことじゃないんだよと苛立ちを覚えることがしばしばあるのです…。

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