私的名品紹介 ~三陽商会の100年コート(7年選手)~

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「Begin」みたいなモノ好きファッション雑誌では、長い間使い込んだ服やアクセサリーを◯◯年選手と言ったりしますよね。

ここでは私が持っている服やモノで、ある程度使い続けているもの、そして今後も使い続けていきたいと考えているものを紹介します。

まずはまだ寒いものの、そろそろ春に向けて買い物をしようとされている方に向けて、春の装いを代表とする、トレンチコートを紹介しようと思います。

トレンチコートといっても数多くあるわけですが、私が着ているのは三陽商会が販売している100年コートです。

100年コートとは

「TIMELESS WORK. ほんとうにいいものをつくろう。」の理念の元、永く愛されることをテーマに、日本の匠の技を結集させたコートとして、”100年コート”は生まれました。 親から子へ、子から孫へ。歳月と共に美しさをたたえ、受け継がれていくように。

https://www.sanyo-shokai.co.jp/brand/lineup/100nencoat.html

コートの生産で有名な三陽商会が10年くらい前に発表した100年コート

公式サイトにも書かれていますが、100年間の品質を保証するものではなく、手入れやリペアをしながら世代を超えて着続けられるようなコート、という意味のようです。今の時代にも合った素晴らしいコンセプトだと思います。

そのため修理やメンテナンスについての相談に乗ってくれる「100年オーナープラン」というサービスもあります(私は入ってませんが・・・)

もちろん自分も将来に息子に譲りたいと思いながら着ています。着てくれるかは分かりませんが…

7年着こんだ100年コートがこちら

7年着こんだ・・・というのは本当であり本当ではありません。

実はこのコートはエイジドモデルと呼ばれる、既に製品洗いを施したコートなんです。だから7年間着こんだのは事実ですが、新品のコートを着てこのような状態になるかというと分かりません。

でも良い味が出てきていると思いませんか?

この着こんだ感じに惚れたのと、当時のラインナップのなかでこのモデルだけ釦がベージュだったんですよね。他のモデルは釦が黒で、ベージュの方が馴染んでいると思ったのもこのモデルを選んだ理由です。

ちなみに今回公式サイトを覗いたら、このエイジドモデルは見つけられませんでした。

廃盤となってしまったのかもしれません。

100年コートの良いところ① ~上質な生地~

まず生地について。上質な生地であるとは、”長年着込んだときに良い味が出るか?”と私は考えています。そのためには当然脆い生地ではいけません。また経年変化という点ではウールやコットンといった天然繊維が望ましいです。ポリエステルやナイロンといった合成繊維ですと、経年変化というより経年劣化してしまうことも多いからです。

100年コートの生地はその条件を満たしていると思います。

まずは公式サイトに書かれた生地の説明を見てみましょう。

コートの表地にはGIZA COTTON(エジプトの超長綿)を原料に使用し、70/2の糸をタテ糸、ヨコ糸をそれぞれ糸染めし、高密度で織り上げたギャバジンを採用。先染めならではの高級感のある色合いと、匠の技が成す高密度織りが品質の良さを際立たせます。

三陽商会 公式オンラインストアより

これを見て意味が分かるでしょうか?私は今のアパレル業界の問題点の1つに商品紹介が専門的すぎて、一般の方には分かり辛いという点があると思います。ちょっ噛み砕いてみます。

「GIZA COTTON(エジプトの超長綿)を原料に使用し・・・」

超長綿とは最も長く、そして細く伸ばせて糸にできるコットンのことを言います。世界で生産されるコットンの5%!ほどしかない希少な素材で、エジプト(ギザコットン)・インド(スビンコットン)・アメリカ(スーピマコットン)が三大産地として知られています。

繊維が細く毛羽立ちが少ない。細く伸ばせるということは強度があるということです。また適度な油分を含んでいるため、生地にしたときにしなやかな風合いになります。ギザコットン・スビンコットンといってもそれぞれに等級がありますので一括りにはできないのですが、一般的には上質な素材だと言われています。

「70/2の糸をタテ糸、ヨコ糸をそれぞれ糸染めし、高密度で織り上げたギャバジン」

70/2というのは糸の太さと本数を表した数字です。分子の70が糸の太さ。ある一定の重さで比較したときに、どれだけ長い糸かを示します。つまり数字が大きいほど細い糸となるわけです。分母の2は糸の本数で、この場合は70/1の糸を2本撚っている双糸と呼ばれる糸であることを表しています。

タテ糸とヨコ糸とは何でしょうか?詳しくは追って別の機会に記事にしようと思いますが、全ての織物はタテ方向に張った糸に横から別の糸を通して作られます。今回はその両方の糸が2本あると言っているのです。糸の本数が多いほうがより丈夫になるというのは、感覚的にも分かると思います。

高密度で織り上げるとは、より多くの糸の本数を使って生地を作っているということです。密度が高くなるとしっかりとした生地となります。また水が浸透しにくくなるため、元々レインコートいうトレンチコートの用途にも合っています。

ギャバジンというのは生地の組織の名前。綾織と呼ばれる、生地の表面に斜めの線が入った生地のなかの一つです。トレンチコート=ギャバジンというイメージを持っている方もいるしょう。

少し長くなりましたが、要するに100年コートは上質な素材をしっかり織り込んだ生地を使っているということです。是非お店に行って触ってみてください。

100年コートの良いところ② ~襟回りの美しさ~

コートに限らずジャケットやポロシャツでも襟周りは重要です。それはまず最初に目に入る場所だからです。特にトレンチコートは襟の分量が大きいため、きれいに縫うのは難易度が高くなります。

100年コートを縫っているのは青森県にあるサンヨーソーイング。コート専門という珍しい工場で、50年以上の期間で培ってきた技術が100年コートに注がれています。

その技術やノウハウは企業秘密ですから部外者には知ることはできません。でもその一端が公式サイトに紹介されています。

前身頃と見返しを縫い合わせるとき、表から見返しがのぞかないよう、わずか0.5mmだけ控えます。こうすることにより、見返しとフロントが安定し、ラペルは左右均等に返ります。

https://www.sanyo-shokai.co.jp/brand/lineup/100nencoat.html
分かりづらいですが2枚の生地がわずかにずらして縫われています

これは余談ですが、以前あるユナイテッドアローズの店頭に飾られていたトレンチコートを見たときに、あれ?なんだか自分が着ている100年コートっぽいな・・・と感じたことがありました。

実はそのコートは、ユナイテッドアローズがサンヨーソーイングに生産を依頼したコートだったのです。そんなところにも工場の技術力が出ているんだなと感心した記憶があります。

気に入らないところ ~脇の貫通ポケットがない~

唯一ですが気に入らないところがあります。それは脇の貫通ポケットがないことです。マガジンポケットとも言われる場所で、これがあるとボタンを留めて着たときに、外からパンツのポケットにアクセスしやすくなるのです。これがないため、駅の改札でポケットに入れたSUICAを取り出す時なんかに少し手間取ります。

当然コートを買う際に気づいてたのですが、まあ大丈夫かなと思って妥協しました。でも思った以上に重要なディテールだった…。

今販売している100年コートには貫通ポケットは付いているようなので安心してください。

まとめ

今回は100年コートを紹介しました。

10万円近くするコートですので、決して安価ではないですが、価格に見合った価値があると思います。

星の数ほどあるトレンチコートですが、正統派の1着を求める方には是非おすすめしたいコートです。

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