BARNS OUTFITTERSの「TSURI-AMI」Tシャツを買いました。
その名の通り、吊り編み機で編んだ生地を使った製品です。
今回はそんなこだわりの詰まったTシャツと、そもそも吊り編みがどうして良いと言われるのか?といった話をしたいと思います。
「TSURI-AMI」シリーズとは?
BARNS OUTFITTERSというアメカジ系のトップスを展開するブランドの商品で、「TSURI-AMI」シリーズと「COZUN」シリーズが定番のようです。どちらのシリーズもジャージを編む、丸編み機と呼ばれる機械の種類のことで、「TSURI-AMI」は吊り編み機で編んだ生地を、「COZUN」は小寸編み機で編んだ生地を使っています。どちらの機械も今では世界的にもほとんど数がない希少なものです。
ディテールをチェックしよう
まずは首周り。
首周りにはバインダーネックといって、身頃の生地を衿周りの生地で挟み込む仕様となっています。この作りは首元がダルダルになるのを防いでくれます。一方で見た目はがっしりとしたイメージになります。
続いて脇を見てください。
これは丸胴と呼ばれるもので、脇に縫い目がありません。よく縫い目が無いために着心地が良く高級な仕様といったように紹介されることがあります。
これは半分本当で、半分は嘘です。
子ども服の縫い目が、表側に出るようになっているように、肌が敏感な方に取っては嬉しい仕様だと思いますが、私は正直丸胴だからといって着心地の良さを感じたことはありません。それよりも生地の風合いやパターンの良さの方が、着心地に直結すると思います。
実際これは高級な仕様というよりも、生産合理性を重視した、きわめて昔のアメリカらしい仕様なのです。というのも丸編みという言葉が表すように、そもそもジャージー生地は全て筒状で編み上がってきます。それをカットして、首周りと袖を付けたのが、原始的なTシャツの作り方です。この作り方は比較的簡単なので安く生産できます。だから決して高級な仕様ではないのです。
ちなみに筒状の生地ではシルエットやサイズの調整が細かくできません。だから一般的には開反と言って、生地の1箇所をカットして、平らな状態にしてから出荷されます。そういったことから、丸胴のTシャツはアメリカのヴィンテージウェアらしい仕様ということは言えると思います。
吊り編み生地の魅力とは?
そして生地のお話しです。
吊り編み生地の魅力とは何か?
それは糸の良さを損なわずに生地に加工できること、と私は捉えています。
良く知られているように、吊り編み機の生産性ははっきり言って悪いです。だから絶滅危惧種となってしまい、より生産性が高いシンカーと呼ばれる編み機に取って代わられてしまったわけですが、その一方で、糸にテンションをかけずに編むことができるという特徴があります。そのため元の糸の風合いを損なわないふっくらとした生地を編むことができるのです。だから吊り編み生地だから何でも良いというわけではなく、元々の糸選びが重要であるということです。
またこれは他の製品を10年以上着用した実感ですが、吊り編みの生地は着用を繰り返すと自分の身体、肌に馴染んでくる感覚があります。コットンは洗濯すると縮みますが、テンションをかけずに編んでいるために、より身体にフィットし易いのかもしれません。この感覚はデニムのジーンズが、着用を繰り返すと徐々にフィットしてくる感覚と似ています。耐久性が高いと紹介している記事もありますが、私はそれには懐疑的です。破れるときは普通に破れますので。
デメリットは?
生地の生産性が悪い=生地値が高い
ですので、洋服も若干割高となります。ただ高いとは言っても、今回は買ったTシャツはアンダー1万円で買えます。風合いの良さと、着込んでいくと身体に馴染んでいく感覚を楽しめるという店では、決して高い買い物ではないと思います。もっとも風合いの良さを気に入るかどうかは人それぞれですので、1度お店で生地に触れて、製品を着てみることをオススメします。
まとめ
今回は吊り編み生地について紹介しました。
この生地をオススメするのは、古いものは素晴らしいとか、ゆっくり生産されたものは良いものだ、というような懐古主義的な理由ではありません。決して全ての生地がとは言いませんが、このローテクな技術で作られた生地の風合いが良いからオススメしたいです。
今回紹介したのは天竺編みという、Tシャツに一般的に使われる生地ですが、スウェットに使われる裏毛という生地のほうが、より吊り編みの魅力が伝わるかもしれません。これについては別途触れたいと思います。
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